王子様は探るような眼で俺のことを見てくる。思わず、顔をそらして、明後日の方向を見てしまう。
「ははは」「あははは」
心のこもっていない笑い声が重なる。横目でちらりと見ると、うすい笑顔
搬屋公司を張り付けたまま、じっと俺の横顔を見つめていた。
双子の姉妹だけあって、見た目だけは、ふたりとも本当によく似ている。
姉の亜紀は、おしとやかで落ち着いた雰囲気。妹の佐紀ちゃんは、活発で明るい。
性格こそ全然違うが、顔つきといい、背格好といい、そっくり同じだ。
しかも、今、俺を真剣な眼で見つめてきている表情なんて・・・・・・
ん? けど、似すぎていないか? 亜紀が真剣になっているときの顔がそっくりそのままそこにあるような。
それに、今、亜紀はどこにいるんだ? パークに来てから着替えに二人していって、ひとりだけ先に戻ってきていて・・・・・・
・・・・・・
二人を見分ける決定的な証拠を思い出した。左目の下、泣きぼくろがあるかないか。あれば亜紀だけど、なければ佐紀ちゃん。けど、今、その場所はマスクで隠されていて見えない。
んん? どっちだ? 本当に目の前の王子様は佐紀ちゃんなのか?
亜紀とは夏の終わりに俺の方から告白して付き合いだした。
それまでずっと気になっていた相手だし、どこか憧れてもいた。今の牛熊證到期学校へ入学して以来、俺が一番見つめ続けていた子だ。
その妹の佐紀ちゃんは、明るく華やかな性格もあって、人気者だし、学校の中でもよく目立っていた。いつも周りに人だかりができていた。だが、その分、俺とふたりで話す機会なんてほとんどなかったし、正直、亜紀ほどには、あまりよくは知らない。
今、俺のそばに立っているのは、自分では佐紀ちゃんだという。けど、俺がその子から感じとれるのは、いつも俺が見てきて、憧れてきたものに近いもので・・・・・・
迷っていたのは、本当に短い間だけだった。俺は決めた。
一度深呼吸して、王子様に向き直る。それから、まっすぐに見つめて。
「なあ。バイト中で返事とかちゃんとできなくてゴメンな。あれって決して亜紀のことが嫌いになったとかそういうんじゃないから。むしろ、亜紀は前よりもずっと俺の一番大切な人になっているから」
途端に、狼狽した様子で顔の前で激しく腕を左右に振ってくる。
分類: 健康文化 發布時間:2016年08月01日