魔物考

僕と彼女は離ればなれになった後も緊密に連絡を取り合っていた。僕は郷里に戻ってそこで生活をし、彼女は東京に残って生活をした。彼女の母が入院した際は一緒にお見舞いをしたこともあった。離ればなれになったけれども、結界は有効に働いていた。

魔物は結界が破れないと見ると、今度は僕の一瞬の心の隙をついて僕に牙をむいて襲いかかってきた。僕は原因不明の病にかかり体が動かなくなって入院することになった。そのとき僕は死を覚悟して今生の別れと思い彼女に連絡をした。彼女は東京から駆けつけてきてくれた。

そのとき僕は本当に死を覚悟して、郷里の風景にもさよならとブログにつづっていた。しかし、僕は肩すかしを食った。僕はなぜか回復し生き延びることになった。魔物のねらいはもともと僕ではなかったのだ。

彼女はそのとき直感的に悟ったのかもしれない。このままでは僕が殺されてしまうということを。彼女は一人で立ち向かうことを決心したのだろう。彼女はそれからしばらくして連絡を絶った。

僕は老後再び一緒に暮らすことを彼女と約束していたので連絡がなくてもとくに気にもせず自分の文章を書くことで頭がいっぱいだった。そのとき彼女は僕に助けを求めることもなく、狂気の中で魔物と死闘を演じていたのだ。おそらくそのときには僕に連絡を取ることもできないほどに疲れ果てて衰弱していた。そのことを遠くにいた僕は全く知らなかった。

ある日突然訃報が届き僕は愕然とした。彼女とやっと再会を果たしたときには彼女は棺桶の中に横たわって静かに眠っていた。

彼女は生前一冊の詩集を出していたが、その詩集の一番最後の詩に自分の最後を正確に予言していた。

魔物はその詩からこの世に現れ、やがて彼女をつれてその詩の中に戻っていった。

分類: 健康文化 發布時間:2016年07月18日